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ナノ3D光干渉計測システムとは?原理や特長・活用事例を解説

ナノ3D光干渉計測システムとは、一般的な名称というよりも、株式会社日立ハイテクが販売している走査型白色干渉顕微鏡のシリーズ名として広く知られています。具体的には、ナノ3D光干渉計測システムVS1800が代表的な製品です。
ただし、光干渉を利用した3次元形状計測の技術自体は、他のメーカーも採用しています。
当記事では、ナノ3D光干渉計測システムの特長や活用事例について分かりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。
1. ナノ3D光干渉計測システムとは
ナノ3D光干渉計測システムは、光の干渉現象を解析することにより、微細な表面の凹凸や形状を高精度かつ非接触で三次元的に測定する技術です。株式会社日立ハイテクが「ナノ3D光干渉計測システムVS1800」として製品化しています。
ナノ3D光干渉計測システムの大きな特長の1つは、従来の接触型測定機器では困難であった微細な表面形状の可視化や、多層膜構造における各層の膜厚・段差の測定が、非破壊かつ高分解能で実現できる点です。また、原子間力顕微鏡(AFM)などの他の高分解能計測技術と比較して、短時間で広範囲の面内測定が可能であり、生産現場や開発現場におけるスループット向上にも寄与します。
ナノ3D光干渉計測システムVS1800では、光源から発せられた光をビームスプリッタによって2つに分割し、一方を基準となる参照面へ、もう一方を測定対象のサンプル表面へ照射します。それぞれの反射光を再び重ね合わせることで、サンプル表面の高さに応じた光路差が生じ、干渉縞と呼ばれる明暗のパターンが生成されます。この干渉縞を解析することにより、ナノメートルレベルの高さ分解能で、表面形状を3次元的に再構築することが可能です。
このような干渉計測技術は、半導体ウェハや光学部品、マイクロマシン(MEMS)、高機能フィルムなど、さまざまな精密分野で広く活用されています。
ナノ3D光干渉計測システム VS1800 | アズサイエンス株式会社
1-1. 白色干渉顕微鏡とは
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、白色干渉顕微鏡の一種に分類されます。白色干渉顕微鏡とは、白色光の干渉現象を利用して、物体表面の微細な凹凸や形状を高精度に測定する光学式の三次元形状測定装置です。
一般には白色光を用いますが、測定の安定性や分解能向上のために狭帯域光源(擬似単色光)を使用する装置もあり、そうした場合でも便宜的に白色干渉顕微鏡に含まれます。
白色干渉顕微鏡における代表的な測定方式には、垂直走査干渉法と位相シフト干渉法の2つがあり、それぞれ用途に応じて使い分けられます。
2. ナノ3D光干渉計測システムの特長
既存の白色干渉顕微鏡と比較して、ナノ3D光干渉計測システム(ナノ3D光干渉計測システムVS1800)は、高分解能と広範囲の同時計測、高い測定再現性など、数々の優れた特長を備えています。以下では、ナノ3D光干渉計測システムの主な特長を5つ紹介します。
2-1. 高分解能かつ広範囲を計測できる
ナノ3D光干渉計測システムVS1800の際立った特長の1つは、ナノメートル、さらにはサブナノメートルのレベルでの高い垂直分解能と、広い測定範囲を同時に実現できる点です。
垂直分解能はフェーズモード時で0.01nmという驚異的な値で、対物レンズの倍率に大きく依存することなく得られるため、光学設計上の制約が少なく、柔軟な運用が可能です。
従来の光学顕微鏡では、広い視野を確保しようとすると分解能が低下する傾向がありましたが、ナノ3D光干渉計測システムVS1800では高分解能と広視野を両立できるため、ミクロ領域の形状観察からマクロな工程モニタリングまで、幅広い用途に対応可能です。
2-2. 測定再現性が高い
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、極めて高い測定再現性を実現するシステムです。特に、干渉縞を高さスケールとして活用することで、Z軸の駆動機構による誤差の影響を最小限に抑えています。これにより、フェーズモードにおいては、0.1%以下という非常に高い再現性を達成しています。
また、測定結果の信頼性を高める上で、対物レンズの焦点調整も重要な要素です。ナノ3D光干渉計測システムVS1800には、レンズ内部の光路長の偏差を計算し、適切な補正量をガイドする「レンズ焦点テスト機能」が搭載されています。さらに、オプションの自動レンズ焦点調整ユニット(ALFユニット)を使用することで、オペレーターのスキルに依存することなく、常に最適な焦点状態を自動で維持することが可能です。
2-3. 高速かつサンプルにダメージを与えず測定できる
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、従来のようなXY方向の機械的な走査を必要とせず、視野全体を一度に撮像できる面検出型の計測方式を採用しています。測定時間を大幅に短縮することが可能で、特に多数のサンプルを迅速に評価する必要がある工程管理や、製造ライン上でのインライン検査において大きな効果を発揮します。
同様の用途に使われる走査型レーザー顕微鏡と比較しても、ナノ3D光干渉計測システムVS1800はZ軸方向の垂直走査のみで高精度な3D測定が完了するため、測定速度において大きな優位性を持ちます。
さらに、ナノ3D光干渉計測システムVS1800は非接触型の光学測定方式を採用しているため、測定対象に物理的な力を加えることなく、サンプルにダメージを与える心配がありません。
2-4. 計測が簡単にできる
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、直感的に操作可能なユーザーインターフェースを備えており、測定後すぐに3D画像を画面上で確認できます。測定・解析作業の効率化を実現するために、解析内容のリスト化や、独自の解析フローの作成・保存・再利用が簡便に行える設計です。
また、大量の測定データに対してもバッチ処理機能を活用して、複数サンプルの解析結果を一元的に管理し、個別処理の手間や人的ミスを大幅に軽減することが可能です。
さらに、表面粗さの国際標準であるISO 25178に対応しており、多数の評価パラメータから適切なものを選択する必要があります。ナノ3D光干渉計測システムVS1800には、サンプルの特性に応じて最適なパラメータを提案する支援ツールが搭載されています。
2-5. 用途に合わせて柔軟な導入ができる
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、用途や運用スタイルに応じて柔軟に導入できるよう、複数のモデル構成が用意されています。
ベースモデルのType 1は手動XYステージを搭載しており、基本的な測定ニーズに対応します。さらに、自動化ニーズに応じて、ステージ駆動の電動化を段階的に進めたType 2およびType 3がラインアップされています。
3. ナノ3D光干渉計測システムの活用事例
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、材料・コンバーティング業界から、半導体、自動車、ディスプレイ、そして医療・医薬分野における品質管理まで、さまざまな産業分野で幅広く活用されています。
以下では、ナノ3D光干渉計測システムVS1800の活用事例について紹介します。
3-1. 紙製品や樹脂製品の非破壊検査
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、紙製品や樹脂製品の品質管理において、表面形状および表面粗さの計測に使用されています。
特に、積層フィルムなどにおいて不具合が生じた際、表面・界面または層内のどの箇所に問題が発生しているか究明する必要があり、試料によっては非破壊での計測が求められることが多いです。ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、そのようなニーズに応えることができます。
3-2. メッキの品質管理
電子部品の薄膜化が進む中で、メッキの品質管理にはより正確で精密な分析手法が求められています。
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、従来の走査型プローブ顕微鏡と比較して広い観察範囲を持ちます。一般的な光学観察装置と比較して高いZ分解能を実現しているため、メッキ配線のような大きな段差パターンとその表面の粗さの両方を容易に計測可能です。
3-3. 積層フィルムの不具合確認
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、積層フィルムの表面、裏面、内部に発生するさまざまな不具合に対し、非破壊での計測を行えます。そのため、異常発生時の状態を保ったまま原因を解明することが可能です。
例えば、層断面解析による気泡の評価では、表面の凹みだけでなく、内部の薄い層の厚み分布のムラや気泡の存在を非破壊で特定し、その幅や深さを計測できます。
3-4. トライボロジー評価
自動車の燃費向上や工作機械の省エネルギー化において重要な部品の低摩擦・低摩耗・表面損傷の低減のためには、正確で精密なトライボロジー評価が不可欠です。
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、ワンショットで広いエリアにおけるナノメートルオーダーの粗さ計測が可能です。そのため、3次元計測結果から負荷曲線解析を行うことにより摩耗量(面積および体積)を算出し、定量的な評価を行えます。
まとめ
ナノ3D光干渉計測システムVS1800は、株式会社日立ハイテクが開発・販売している走査型白色干渉顕微鏡です。光の干渉現象を利用して、ナノメートルオーダーの高い分解能で微細な表面形状を非接触かつ高速に3次元計測できます。
主に、高機能フィルム、半導体、自動車部品、ディスプレイといったさまざまな産業分野の研究開発や品質管理の現場で活用されています。垂直分解能は0.01nmを実現しており、対物レンズの倍率に依存せず、ワンショット最大6.4mm×6.4mmでもナノオーダーの粗さや段差を計測可能です。
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