COLUMN製品コラム

GC-MS・GC-MS/MSとは?基礎から用途、原理まで徹底解説

JMS-Q1600GC QuantAnalyzer

GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)およびGC-MS/MS(ガスクロマトグラフ質量分析/質量分析)は、揮発性化合物の高度な分析技術です。GC-MS・GC-MS/MSは、環境分析や食品分析、医薬品の品質管理など、多岐にわたる分野で活用されており、複雑な化合物の正確な特定や定量が可能です。

この記事では、GC-MSおよびGC-MS/MSの基礎から、それぞれの原理や用途について詳しく解説します。これらの技術がどのようにして精密な分析を実現し、さまざまな産業に貢献しているのかを理解するための参考にしてください。

目次

1. GC-MS・GC-MS/MSとは
1-1. GC-MSの基礎
1-2. GC-MS/MSの基礎
1-3. GC-MSとGC-MS/MSの違い

2. GC-MS・GC-MS/MSの原理と仕組み
2-1. GCの原理
2-2. MSの原理
2-3. GC-MSの原理
2-4. GC-MS/MSの原理

3. GC-MS・GC-MS/MSの用途と応用例
3-1. 環境分析での用途
3-2. 食品分析での用途
3-3. 医薬品分析での用途

4. GC-MS・GC-MS/MSの仕様

まとめ

1. GC-MS・GC-MS/MSとは

GC-MSやGC-MS/MSは、揮発性化合物の分析に用いられる技術です。化学物質の調査などで活躍するGC-MSやGC-MS/MSは、環境・石油化学・香料・ポリマーといった幅広い分野で取り入れられています。

ここからは、GC-MS・GC-MS/MSの基礎や、両者の違いを解説します。

1-1. GC-MSの基礎

GC-MS(ガスクロマトグラフ-質量分析)は、化合物の分離と質量スペクトル分析を組み合わせた分析技術です。GC(ガスクロマトグラフィー)は、化合物を揮発性の特性に基づいて分離します。液体や固体を分析する場合は、過熱して気化してから化合物ごとに分離します。GCを用いると、複雑な混合物の成分を高精度に特定し、定量することが可能です。

分離した成分はMS(質量分析)に送られイオン化し、分子量のMSスペクトル(マススペクトル)を測定します。GC-MSの優れた点は、ごくわずかな化合物や未知試料についても定性分析・定量分析ができることです。

1-2. GC-MS/MSの基礎

GC-MS/MS(ガスクロマトグラフ-質量分析/質量分析)は、質量分離部が2段階に分かれ、分析を行う技術です。一次質量分析で生成されたイオンをさらに質量分析することで、より精度の高い分析をできるようにしたのがGC-MS/MSと言えます。

GC-MS/MSは、サンプル中の成分をより正確に特定するために使用されます。サンプル中の成分同士が干渉する場合など、複雑な化合物でも正確に分析できることが、GC-MS/MSを使用する利点です。

1-3. GC-MSとGC-MS/MSの違い

GC-MSとGC-MS/MSの違いは、MS/MSの過程の有無にあります。GC-MSは分析機能が単一であり、GC-MS/MSは二段階の質量分析を行います。GC-MS/MSは、GC-MSと比較したとき、より高いレベルの分析結果を得られる手法です。

GC-MS/MSは特に、複雑なマトリックス中の微量成分の特定において、高い性能を発揮します。サンプルの中に含まれる化合物の種類が多岐にわたる場合でも、GC-MS/MSを用いれば安定した感度で分析できます。

2. GC-MS・GC-MS/MSの原理と仕組み

GC-MS・GC-MS/MSの原理と仕組みを理解するには、それぞれの基本構成を知ることが必要です。ここからは、GC・MSについて詳しく説明した上で、GC-MS・GC-MS/MSのプロセスを解説します。

2-1. GCの原理

GC(ガスクロマトグラフィー)は、揮発性化合物をキャリアガスで移動させ、カラムと呼ばれる管の内部で分離する技術です。

GC内では、分析対象の化合物に応じて適切な温度に加熱し、気体にします。気化した混合化合物は、ヘリウムや水素といったキャリアガスと一緒にカラムへ移動します。混合化合物に含まれるそれぞれの化合物は、カラムを通過する速度が異なるので成分ごとの分離が可能です。カラム通過後に分離した各化合物は、検出器で測定されます。

(出典:J-STAGE「ガスクロマトグラフー質量分析(GC-MS)法」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/9/3/9_3_261/_pdf

2-2. MSの原理

MS(質量分析)は、化合物をイオン化し、質量対電荷比(m/z)に基づいて分離する技術です。イオン化の方法は、化合物に電荷をかけて開裂を起こすEI(電子イオン化)法や、試薬ガスでイオン化を促すCI(化学イオン化)法などがあります。

イオン化された化合物は、イオンの質量を測定する分析計で検出され、構造や分子量を特定できます。

2-3. GC-MSの原理

GC-MSは、GC(ガスクロマトグラフィー)で分離された化合物が質量分析計に導かれ、イオン化される技術です。化合物の分離に優れたGCと、分子量やイオンの構造を特定できるMSは、両者のメリットを生かせる分析方法と言えます。分離された化合物は、MSで質量スペクトルが生成され、各成分の質量と構造が特定可能です。

なお、GC-MSで抽出されたデータはまず、横軸に検出時間・縦軸に検出強度を表示したクロマトグラムで示されます。次に、各成分のMSスペクトル(マススペクトル)から同定を行い、成分を特定します。GC-MSは、複雑な試料の中に含まれた成分を高精度で分析できることが特徴です。

2-4. GC-MS/MSの原理

GC-MS/MSにおいて、GCで分離された化合物が質量分析計に導かれる過程はGC-MSと同様です。GC-MS/MSでは、質量分析で得られたイオンが選択され、2度目の質量分析を行います。質量分析を2回行うプロセスにより、詳細なスペクトル情報が得られ、成分を正確に特定できるのがGC-MS/MSの特徴です。

GC-MS/MSは精度の高さを生かし、食品や水中の残留農薬の検出など、安全性が求められる分析に用いられます。

3. GC-MS・GC-MS/MSの用途と応用例

気化することでさまざまな化合物の分析に利用できるGC-MS・GC-MS/MSは、環境分析や食品分析など幅広い分野で応用されています。ここからは、GC-MS・GC-MS/MSの用途を分野ごとに紹介するため、具体的な活用事例を知りたい場合の参考にしましょう。

3-1. 環境分析での用途

GC-MS・GC-MS/MSは環境分析にも用いられる分析ツールです。GC-MS・GC-MS/MSが利用される一例として、水質や土壌中の微量有機汚染物質の特定と定量が挙げられます。

空気や土壌、水中の環境汚染物質を正確に検出できれば、環境汚染や公害を防げる可能性が高まります。GC-MS・GC-MS/MSは、有害物質や汚染物質の調査に役立つことから、環境保護の観点からも有効な手段です。

(出典:農研機構「GC-MS/MSによるペルフルオロアルキル化合物(PFAS)とその類縁化合物の高感度一斉分析法」/https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/kiban/2021/naac21_s03.html

3-2. 食品分析での用途

食品分析では、残留農薬や添加物の検出にGC-MS・GC-MS/MSが活躍しています。食の安全を確保するためには、わずかな量の農薬や添加物でも検出・分析することが欠かせません。化合物の分離や成分の特定に長けたGC-MS・GC-MS/MSなら、高い精度で分析が可能です。

また、GC-MS・GC-MS/MSは、食物における異臭原因の解析や、植物原料の分析にも用いられます。GC-MS・GC-MS/MSは、私たちの生活に欠かせない食の安全に関わる分析方法の1つです。

(出典:石川県「ガスクロマトグラフ・タンデム質量分析計(GC-MS/MS)等を活用した食品残留物質一斉分析法の確立に関する研究」/https://www.pref.ishikawa.lg.jp/hokan/news/documents/r01gcmsms.pdf

3-3. 医薬品分析での用途

医薬品の品質管理や新薬開発において、GC-MS・GC-MS/MSは重要な役割を果たします。医薬品分析において、GC-MS・GC-MS/MSが用いられるのは、薬物の純度確認や代謝物の特定です。GC-MS・GC-MS/MSの応用によって、新しい薬の開発だけでなく、体内での吸収・代謝・排泄や、血中にある化合物の濃度測定といった日常的な医療データ分析が可能です。

GC-MS・GC-MS/MSは、医薬品分野においても欠かせない分析法であり、安全で効果的な医薬品の開発・提供に貢献しています。

(出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構「多次元ガスクロマトグラフ質量分析法の薬物分析への応用」/https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/38/12/38_12_659/_pdf

4. GC-MS・GC-MS/MSの仕様

GC-MSの主な仕様には、検出器の感度・分解能・測定範囲・イオン化方式などが含まれています。二段階の質量分析を行うGC-MS/MSは、GC-MSの仕様に加え、MS/MSの分解能・イオン検出(スキャン)速度なども仕様を決定する要素です。

GC-MSまたはGC-MS/MSの仕様は、分析対象や目的に応じて選定します。分析対象成分同士が干渉し合う場合など、複雑な化合物を扱うときは、高感度の検出器を用いるのが一般的です。また、測定したい成分が決まっているときには、MS/MSの分解能システムを成分に対応させることがあります。

GC-MS・GC-MS/MS装置の選定では、環境分析・食品分析・医薬品分析など、具体的な用途に合わせて機器を選ぶと、最適な分析結果が得られます。

(出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構「ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph(GC))」/https://www.nite.go.jp/data/000119329.pdf

まとめ

GC-MSおよびGC-MS/MSは、現代の分析科学において欠かせない技術です。特に、複雑な混合物の成分特定や、微量成分の正確な分析を行う際に、その精度と信頼性が強く求められます。環境保護、食品安全、医薬品開発などの分野で活躍するこれらの技術は、私たちの生活を支える重要な役割を果たしています。

今後も、GC-MSおよびGC-MS/MSのさらなる発展により、分析の精度と効率が向上し、より安全で豊かな社会の実現に貢献することが期待されます。

PAGE
TOP