COLUMN製品コラム

蛍光X線膜厚計とは?原理から構造・使用例まで基礎知識を解説

研究や製造の現場において、試作段階にある開発対象物の膜厚が品質基準に適合するかを確認するときやその性能を確認するときには、「蛍光X線膜厚計」が役立ちます。

蛍光X線膜厚計とは、X線を用いて材料表面の膜の厚さを測定する装置です。

当記事では、蛍光X線膜厚計の概要・原理・装置構成・使用目的から、蛍光X線膜厚計を用いた分析方法、さらに他の測定方法との違いまで詳しく紹介します。蛍光X線膜厚計について理解を深めたい場合は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

1. 【基礎知識】蛍光X線膜厚計とは?
1-1. 蛍光X線膜厚計の原理
1-2. 蛍光X線膜厚計の装置構成
1-3. 蛍光X線膜厚計の使用目的

2. 蛍光X線膜厚計の分析方法
2-1. 定性分析
2-2. 定量分析

3. 蛍光X線膜厚計と他の測定方法との違い

まとめ

1. 【基礎知識】蛍光X線膜厚計とは?

蛍光X線膜厚計とは、製品・部品・材料の表面の膜やコーティングの厚さをX線によって非破壊で測定できる膜厚測定装置です。膜厚計には超音波や光学技術を用いた装置もありますが、蛍光X線膜厚計固体・液体・粉末・薄膜など測定試料を標準試料なしで分析できることが特徴です。特に、金属膜(めっき)や複数の膜の厚みを正確に測定するのに適しています。

また、蛍光X線膜厚計は検出システムの違いによって「波長分散型(WDXRF/WDX)」と「エネルギー分散型(EDXRF/EDX)」の2種類に分かれます。

波長分散型蛍光X線膜厚計蛍光X線の波長を分析して元素を識別し、膜厚を測定する方法です。精度と分解能の高さが特徴ですが、構造が複雑で高価となる傾向にあります。
エネルギー分散型蛍光X線膜厚計蛍光X線のエネルギーを検出して元素を識別し、膜厚を測定する方法です。波長分散型に比べて操作が簡単でコスパに優れており、多くの分野で使われています。

ここからは、蛍光X線膜厚計の原理・装置構造・使用目的について詳しく解説します。

1-1. 蛍光X線膜厚計の原理

蛍光X線膜厚計は、下地の材料に到達するX線を照射することで蛍光X線を発生させ、その蛍光X線を分別・解析して膜やコーティングなどの厚さを測定する仕組みとなっています。

物質(原子)にX線を当てると、物質内部にある電子がX線のエネルギーによって弾かれ、物質の外に飛び出ます。物質内部には電子の空き場所が発生し、原子は不安定な励起状態となるため、外側の電子を内側に引き込みます。その際、エネルギーをX線(蛍光X線)として放出するので、その蛍光X線の波長やエネルギーを測定することで、原子の種類や物質のめっき膜厚を検出・測定することが可能です。
蛍光X線の検出・分別時において、膜厚が厚いほど皮膜成分の検出強度は強く、下地成分の検出強度が弱くなります。なお、測定システムは基本的に自動化されており、測定者は測定条件と測定位置を設定するだけで高精度かつスピーディに膜厚を検査できます。

1-2. 蛍光X線膜厚計の装置構成

蛍光X線膜厚計の装置構成は、基本的に下記のコンポーネントから成り立っています。

X線発生部X線を生成させるための装置で、X線管と高圧電源で構成されています。
試料室測定対象物を載せる台で、「試料ステージ」とも呼ばれます。X線を上側から当てる上面照射型と、下側から当てる下面照射型(XANタイプ)があります。装置によっては、自動移動ができるものもあります。
検出器物質から放出された蛍光X線を分別・検出する装置です。波長分散型とエネルギー分散型の2種類があります。
分析ユニット    検出器で検出したX線データを処理・解析するユニットです。
制御防御部蛍光X線膜厚計の動作全体を制御するための部品であり、ユーザーが装置の操作を行うためのインターフェースでもあります。安全性を確保する防御機能も備わっています。

1-3. 蛍光X線膜厚計の使用目的

蛍光X線膜厚計は、研究・開発の現場や製造業、金属加工業、電気・電子機器業など幅広い業界・分野で活躍しています。主な用途としては、下記が挙げられます。

・各種金属めっきの膜厚測定および膜厚分布の測定
・金属の腐食・変色の評価解析
・構成元素の定性・定量分析
・異物・異状箇所の検出・測定
・元素分布測定

上記のことから、蛍光X線膜厚計は研究開発・製造工程・品質管理の一環として重要な役割を果たす装置と言えます。

2. 蛍光X線膜厚計の分析方法

蛍光X線膜厚計は、「定性分析」と「定量分析」が可能です。対象物の膜厚を測定する目的によって適切な分析法は異なるため、それぞれの詳細を理解することは大切です。ここからは、蛍光X線膜厚計における定性分析と定量分析の概要をそれぞれ詳しく説明します。

2-1. 定性分析

蛍光X線膜厚計の定性分析は、固有X線の波長もしくはエネルギーと原子番号との規則性を利用した分析方法です。主に、液体試料・固体試料・粉末試料の中に含まれる元素の種類を特定する際に使用します。

ほとんどの蛍光X線膜厚計には定性分析の機能が備わっており、KLMマーカーを表示させて複数の特性X線の強度比を観察します。試料中に含まれる元素の種類によっては、特性X線のエネルギー位置が近接することによって互いのスペクトルが重なり合い、干渉ピークを起こしやすくなることに注意が必要です。

2-2. 定量分析

蛍光X線膜厚計の定量分析は、蛍光X線の強度が元素の量によって変わるという性質を利用した分析方法です。主に、試料中の特定の元素の含有量を調べる際に使用します。

また、定量分析には「検量線法」と「ファンダメンタル・パラメータ法(FP法)」の2種類があります。検量線法とは、すでに濃度を把握している試料サンプルを標準物質として測定することによって得た検量線をもとに、未知資料の濃度を特定する定量方法です。

一方のファンダメンタル・パラメータ法は、試料を構成する元素の種類とその組成を把握できれば、それぞれの蛍光X線強度を計算できるという理論を活用した方法です。未知試料の測定で得た各元素の蛍光X線強度に一致する組成を推定するため、標準物質がなくても組成を計算できます。

3. 蛍光X線膜厚計と他の測定方法との違い

めっき膜厚測定方法としては、蛍光X線以外にもさまざまな種類があります。蛍光X線とその他の測定方法の違いは、下記の通りです。

測定方法タイプ
蛍光X線  試料にX線を照射することによって発生する蛍光X線強度を測定し、試料表面の元素濃度や膜厚を分析する非破壊式  
電磁式鉄心入りのプローブに磁性体を近づけることによって起こる電磁誘導・2次コイルの電圧変化を利用して膜厚を測定する非破壊式
電解式測定面を陽極、電解液を注入するセルを陰極として電解することによって、一定面積を溶解するのに要する時間や電気量に基づき、測定を行う破壊式
断面式試料を切断し、断面の膜厚を顕微鏡で測定する破壊式
質量法塗膜の質量と面積を算出して膜厚を測定する破壊式

蛍光X線膜厚計は、その他の測定方法と比べて多くの対象物に対応しており、微小試料や極薄膜の測定、簡易的な表面元素分析が可能です。特殊な技術や複雑な操作は基本的に必要なく、短時間で測定できることも特徴と言えます。

しかし、蛍光X線膜厚計は原則として試料サイズに上限があり、極厚膜の測定は不可能です。膜厚を測定したい対象物のサイズなどを踏まえた上で、適切な測定方法・装置を選ぶとよいでしょう。

まとめ

蛍光X線膜厚計とは、製品・部品・材料の表面の膜やコーティングの厚さをX線で測定する非破壊式の膜厚計です。あらゆる試料を分析でき、特に金属膜や複数層の膜厚を測定するのに役立ちます。定性分析と定量分析のいずれも可能で、簡易的な表面元素分析も行えます。

アズサイエンス株式会社では、主要メーカーが開発・製造した高性能な蛍光X線膜厚計を取り扱っております。蛍光X線膜厚計の導入を検討している企業担当者の方は、ぜひ下記ページから蛍光X線膜厚計をチェックしてみてください。

蛍光X線膜厚計についてはこちら

PAGE
TOP