COLUMN製品コラム
プラズマ装置とは?主な種類や用途について分かりやすく解説

プラズマ装置は、物質の表面に微細な変化を与えることで、製品の性能や加工効率を高める役割を果たします。表面の親水性や接着性、洗浄性を向上させる技術として、電子部品や医療器具、包装材など、さまざまな分野で活用されています。
当記事では、プラズマとは何かという基礎知識や代表的なプラズマ装置の種類、処理方式の特徴、実際の用途における効果などを解説します。プラズマ処理の導入を検討している方や、装置の違いを比較したい方はぜひ参考にしてください。
目次 1. プラズマ装置とは 1-1. そもそもプラズマとは 2. プラズマ装置の種類 2-1. ガス照射型プラズマ装置 2-2. 放電処理型プラズマ装置 2-3. 真空プラズマ装置 3. プラズマ装置の用途 3-1. 親水化 3-2. 接着性改善 3-3. 洗浄 まとめ |
1. プラズマ装置とは
プラズマ装置とは、物質の表面にプラズマ処理を施すことで、親水性や接着性、洗浄性などの表面特性を向上させる装置です。プラズマ装置は「プラズマクリーナー」と呼ばれることもあり、表面改質や洗浄を通じて製品の品質と生産性を高める重要な役割を担います。
特に製造業では、印刷や塗装の密着性向上、微細な異物の除去、微細加工の下処理などを目的として活用されています。
1-1. そもそもプラズマとは
プラズマとは、物質の第4の状態を指します。通常、物質は固体・液体・気体のいずれかの状態をとりますが、気体にさらに高いエネルギー(熱や電力など)を加えると、原子を構成する電子がはがれ、正の電荷をもつイオンと負の電荷をもつ電子に分かれます。電離が起こり、荷電粒子を含んだ状態がプラズマです。
プラズマの特徴は、電磁場に反応する性質や、高い化学活性をもつ点にあります。気体と異なり、粒子間には遠くまで影響を及ぼすクーロン力が働くため、独特の振る舞いを示します。また、正と負の電荷のバランスが取れており、全体としては電気的中性を保っています。
身の回りにもプラズマは存在し、蛍光灯やろうそくの炎、ネオンサインなどが代表例です。さらに、太陽やオーロラ、雷といった自然現象もプラズマによって生じています。
2. プラズマ装置の種類
プラズマ装置は、生成方法や処理環境の違いによっていくつかの種類に分類されます。代表的なものに「ガス照射型プラズマ装置」「放電処理型プラズマ装置」「真空プラズマ装置」があり、それぞれ用途や特性が異なります。
大気圧プラズマ処理 | ガス照射型プラズマ装置 |
放電処理型プラズマ装置 | |
真空プラズマ処理 | 真空プラズマ装置 |
装置ごとに表面処理の方式や対象物への影響が変わるため、処理対象の素材や目的に応じた装置を選びましょう。ここでは、各装置の特徴や利点・課題について詳しく解説します。
2-1. ガス照射型プラズマ装置
ガス照射型プラズマ装置は、大気圧下でプラズマ化した活性ガス(ラジカル)を対象物の表面に吹き付けて処理するタイプの装置です。放電空間とワークが直接接触しない構造のため、熱や電気によるダメージが少なく、熱に弱い樹脂や複雑な形状の製品にも対応しやすいという特徴があります。
メリットとしては、電気的・熱的ダメージが少ないこと、凹凸形状への対応力があることが挙げられます。一方、処理幅が狭いため、大型素材や連続処理には不向きであり、オゾン発生による排気対策も必要です。
2-2. 放電処理型プラズマ装置
放電処理型プラズマ装置は、誘電体バリア放電(DBD)を利用し、大気圧下で被処理物を電極間に配置して直接プラズマを生成する方式です。ガスと高電圧の組み合わせにより、酸素ラジカルなどの活性種が生成され、表面の官能基付与や有機物の除去が行われます。
片側に誘電体を設けた片バリア方式が一般的で、被処理物に対して均一な処理が可能です。特に、平面状のフィルムやシートなどに適しており、接着性向上や印刷性改善などの効果が得られます。
放電処理型プラズマ装置のメリットは、大面積の素材を一度に処理できる点や、さまざまなガスに対応できる柔軟性です。反面、電極間に配置する必要があるため、凹凸のある素材は処理が困難な点には注意しましょう。
2-3. 真空プラズマ装置
真空プラズマ装置は、減圧したチャンバー内でプラズマを発生させる方式です。真空中では不純物の影響が少ないため、安定した高品質な処理が可能であり、特に電子・医療・研究分野など、精密さが求められる用途に適しています。
真空プラズマ装置のメリットは、処理の均一性とクリーン性が高く、官能基の高効率付与や微細なエッチングが可能な点です。一方、装置が大型化しやすく、真空生成に時間がかかるため、生産ラインへの組込みには工夫が必要です。また、過剰な処理により対象物の強度低下が起こる場合もあります。
3. プラズマ装置の用途
プラズマ装置は、物質の表面特性を変化させることにより、製品の品質や加工性を大きく向上させます。プラズマ処理は、電子部品や医療器具、樹脂製品、金属材料など、幅広い産業分野で活用されています。
ここでは、それぞれの用途について具体的な作用とメリット、使用されるシーンを紹介します。
3-1. 親水化
親水化とは、物質の表面を水になじみやすく改質する処理です。プラズマを照射することで、表面の有機汚染を除去するとともに、水酸基(–OH)などの極性官能基を導入し、表面自由エネルギーを高めます。その結果、水接触角が小さくなり、液体が均一に広がりやすくなります。
この効果は、コーティング、塗装、印刷といった工程において、均一な膜形成を可能にします。特に樹脂フィルムや金属基板、医療用チューブなど、液体処理が必要な製品において効果的です。
親水化処理は、単に洗浄するだけでは得られない表面活性を実現し、製品の加工精度や信頼性を向上させるプロセスです。
3-2. 接着性改善
プラズマ処理は、異種材料間の接着性を高めるためにも活用されています。表面に極性官能基を導入すると接着剤との化学的親和性が向上し、さらに微細な凹凸構造を形成することで、物理的な密着力も増加します。
特に、ポリプロピレンやポリエチレンなどの非極性樹脂は、通常の前処理では接着が難しいとされてきましたが、プラズマ処理により接着性が改善します。また、金属やセラミックスなどとの接着にも有効で、樹脂–金属、樹脂–樹脂といった多様な素材の組み合わせに対応可能です。
接着性の向上は、製品の強度・耐久性・安全性に直結するため、電子機器、車載部品、医療デバイスなど、さまざまな分野で導入されています。
3-3. 洗浄
プラズマ装置は、精密洗浄の用途にも広く利用されています。特に酸素プラズマによって生成される酸素ラジカルは、有機汚染物質に含まれる炭素原子と反応し、二酸化炭素や水蒸気として揮発させ、表面から除去します。これにより、通常の洗浄では落としきれない微細な有機物や、静電気で吸着した粒子を除去できます。
プラズマ装置による洗浄は、金属やガラス、樹脂など、さまざまな材料に対して有効で、半導体製造や光学部品、医療機器など、クリーン性が要求される分野で活用されています。特に真空プラズマ装置を用いた処理では高純度な洗浄が可能で、研究・開発用途にも適しています。
プラズマ洗浄は、物理的接触を伴わない非接触洗浄であるため、デリケートな部品にも安全に処理を施せます。
まとめ
プラズマ装置は、処理方式や環境に応じてさまざまな種類が存在し、それぞれが異なる特性やメリットをもっています。大気圧下での非接触処理が可能なガス照射型、フィルムやシートに適した放電処理型、高精度な処理が求められる分野に適した真空プラズマ装置など、さまざまな種類があるので、用途に応じて選びましょう。
プラズマ処理は、親水化・接着性向上・精密洗浄といった目的に対して極めて有効な技術です。非接触で表面改質ができる点も、従来の処理技術にはない大きなメリットと言えるでしょう。今後も製造プロセスの高度化に伴い、より多様な分野で活用が進むことが期待されます。
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